野村證券と野村アセットがKLab株を5.96%保有
野村證券と野村アセットマネジメントが合計5.96%を保有する形で大量保有報告書を提出したが、その実態は証券業務在庫と信託財産運用を背景とした貸株循環構造であり、長期的な安定保有とは性格が異なると見るのが自然だ。
出典:大量保有報告書(報告義務発生日:2025年9月15日、提出日:2025年9月19日)、発行済株式数60,392,300株
サマリー
出典:大量保有報告書(2025年9月19日提出)
提出者とは
野村證券は国内最大手の総合証券会社であり、自己勘定ディーリング・引受・貸株など幅広い証券業務を展開する。今回の保有目的は「証券業務に係る商品在庫」と記載されており、長期投資ではなくディーリング在庫として短期的に株式を抱え、顧客取引・貸株業務・ヘッジに利用する性格のポジションである。
野村アセットマネジメントは野村グループの資産運用部門であり、投資信託・年金資金等の信託財産を受託して運用する。保有目的は「信託財産の運用」と記載されており、受益者利益のための運用が建前となる。ただし後述のとおり、保有株の大部分が貸株として外部証券会社に供給されている実態がある。
出典:大量保有報告書(2025年9月19日提出)記載内容に基づく
取得の構造
両社の保有内訳は以下のとおりである。
| 提出者 | 保有株数 | 保有割合 | 保有目的(記載ベース) |
|---|---|---|---|
| 野村證券 | 2,191,088株 | 3.63% | 証券業務に係る商品在庫 |
| 野村アセットマネジメント | 1,405,900株 | 2.33% | 信託財産の運用 |
| 合計 | 3,596,988株 | 5.96% | — |
出典:大量保有報告書(2025年9月19日提出)
野村證券の保有については、資金調達の構造として野村アセットマネジメントから25.5万株、SBI証券から170万株などを借入している一方、Nomura International plc(英国)へ約219万株を貸出している。すなわち、在庫循環と貸株業務の中で発生している数字であり、自己資金による純投資とは異なる。
野村アセットマネジメントについては、保有する1,405,900株のうち合計106万株超を外資系証券各社に貸出している。貸出先の内訳はモルガン・スタンレーMUFG証券へ64万株、バークレイズ証券へ36万株、ソシエテ・ジェネラル証券へ5万株、シティグループ証券へ1,700株、ゴールドマン・サックス証券へ100株である。信託資産による保有の裏で、実際には株式が市場に再供給され、空売りや裁定取引に利用されている構図が読み取れる。
出典:大量保有報告書(2025年9月19日提出)記載の貸借内訳
論点の整理
今回の報告書から整理すべき論点は以下の三点である。
【論点①:保有の実質は「在庫循環と貸株」】 野村證券の3.63%は商品在庫であり、短期的な需給対応として組み入れられたポジションである。野村アセットマネジメントの2.33%も信託財産名義ではあるものの、保有株の大部分が貸株として外部に流通している。合計5.96%という数字を「機関投資家による安定保有」と即断するのは適切でない。
【論点②:KLabの事業特性と需給の関係】 KLabは2000年創業のスマホゲーム独立系開発会社で、「BLEACH Brave Souls」「ラブライブ!スクフェス」などアニメ・漫画IPを活用したタイトルを中心に、ヒットタイトルの運営課金収入に依存する収益モデルを持つ。一作のヒット・失敗で業績の振れ幅が大きく、市場からは材料株としての性格が強い銘柄とされる。こうした特性が貸株を通じた需給変動と重なれば、市場の価格形成に影響を与える可能性がある。
【論点③:スマホゲーム業界の構造変化との交差】 業界全体では人気IPの取り合い激化・大作開発費の増大(数十億円規模)・中国・韓国勢とのグローバル競争激化という三つの構造変化が進行している。KLabが新規IP獲得や海外展開でこれらに応答できるかどうかが、中長期の事業の帰趨を左右すると見るのが自然だ。
この保有を、どう追うか
変更報告・追加取得の有無を継続して記録する。保有目的に動きがあれば、企業カルテに反映する。
