Long Corridor、THE WHY HOW DO COMPANY株式15.09%を取得
【結論】本件は「香港ヘッジファンドによる大口保有」という外形の下で組まれたCBアーブ型ファイナンス取引であり、Long Corridor にとっては新株予約権引受と代表取締役からの借株を組み合わせたデルタニュートラルの建付け、発行体にとっては産業廃棄物処理事業の設備投資資金を外部ヘッジファンドから調達する手段の一つと整理される。第16回新株予約権にも別途引受契約が存在することを踏まえれば、両者の関係は複数シリーズにまたがる継続的なファイナンス・パートナーシップの段階に入っていると見るのが自然だ。
出典:Long Corridor Asset Management Limited 提出「大量保有報告書」(2026年4月5日提出、報告義務発生日2026年4月3日)、発行体 THE WHY HOW DO COMPANY 株式会社(証券コード4823)有価証券報告書
サマリー:誰が、何を、どれだけ、どの目的で保有するか
2026年4月5日、香港拠点のヘッジファンド運用会社 Long Corridor Asset Management Limited が関東財務局長宛に大量保有報告書を提出した。報告義務発生日は2026年4月3日。発行体はスタンダード市場上場の THE WHY HOW DO COMPANY 株式会社(証券コード4823)である。
自己資金による現物株取得はゼロであり、報告上の「取得資金」は新株予約権払込代金相当の借入金756万円と借株のみで構成される。開示数値の絶対額が小さい点は、経済的実質としてのポジション規模(潜在株ベース2,300万株)を反映していないことに留意が必要だ。
出典:大量保有報告書(2026年4月5日提出)
提出者とは:Long Corridor Asset Management の素性と運用スタイル
Long Corridor Asset Management Limited は香港を拠点とするヘッジファンド運用会社である。創業者は、香港の老舗ヘッジファンド Nine Masts Capital の共同創業者として知られた人物であり、その後独立して現ファンドを立ち上げた経歴を持つ。
運用戦略は「クロスキャピタルストラクチャー投資」と称され、株式・転換社債・新株予約権を横断的に組み合わせることで上下両側のリスクを制御しながらリターンを積み上げる設計になっている。2024年第1四半期時点で米国上場銘柄ベースの13Fで報告された運用残高は約1,279万ドルであり、上位10銘柄で98%を占める高集中度ポートフォリオが特徴とされる。
同社は2016年に東京にリサーチ拠点を開設しており、日本株のアイデアソーシングを現地で行える体制を整えている。今回の報告書類上の事務連絡先は「東京都千代田区丸の内二丁目4番1号 丸の内ビルディング9階 Long Corridor Global Asset Management」であり、その延長線上に位置する。
投資ビークルとしては Long Corridor Alpha Opportunities Master Fund(LCAO)、MAP246 Segregated Portfolio、BEMAP Master Fund Ltd. の3本が登場しており、Long Corridor Asset Management Limited はこれらに対して投資運用契約に基づき投資裁量を行使する立場にある。
出典:大量保有報告書(2026年4月5日提出)、SEC 13F(2024年第1四半期)
取得の構造:借株→新株予約権引受という「デルタヘッジ先行」の手順
取得のシーケンスは明瞭である。2026年4月1日にまず代表取締役・田邊勝己氏から借株により普通株200万株のショートアベイラビリティを確保し、その2日後の4月3日に第13回新株予約権2,100万株相当を第三者割当により引き受けた。借株→オプション引受の順序は、新株予約権のデルタに対するヘッジ原資を事前に押さえたうえで引受契約を締結したことを示唆する。転換社債アービトラージャーの典型的な発注ロジックである。
| 年月日 | 種別 | 数量 | 割合 | 市場内外 | 区分 | 単価・条件 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年4月1日 | 普通株式 | 2,000,000株 | 1.31% | 市場外 | 取得 | 借株(田邊勝己氏より) |
| 2026年4月3日 | 第13回新株予約権 | 21,000,000株相当 | 13.78% | 市場外 | 取得 | 1個1.6円・第三者割当 |
借株の貸し手である田邊勝己氏は同社の主要株主かつ代表取締役である。過去にも同氏と寺尾慶太氏を割当先とする第12回新株予約権が発行されている経緯がある。今回、傘下3ファンド(LCAO・M246・BEMAP)と田邊氏との間で2026年3月7日から2027年4月3日までの株式貸借契約が締結されており、貸借株数はLCAOが148万株、M246が26万株、BEMAPが26万株の合計200万株である。
取得資金として計上されているのは新株予約権の払込代金に相当する借入金756万円(メリルリンチ・インターナショナル、ロンドン)のみであり、普通株200万株は借株(自己資金ゼロ)として取得されている。報告上の「取得資金合計」が小さい理由はここにあり、経済的実質としてのポジション規模(潜在株ベース2,300万株)とは乖離している点に注意が必要だ。
さらに、LCAO・M246・BEMAPの3ファンドは発行体との間で第16回新株予約権に係る引受契約を別途締結していることが報告書に付記されており、Long Corridor と発行体の関係は単一シリーズの取引にとどまらない継続的なファイナンス関係であることが読み取れる。
出典:大量保有報告書(2026年4月5日提出)
論点の整理
本件を読み解くうえで注目すべき論点を三点に整理する。
保有目的は「純投資」と記載されているが、発行体のキャッシュフロー計画が新株予約権行使を前提としている以上、Long Corridor の行動は発行体の財務運営に直結する。変更報告書の提出や第16回新株予約権に関する続報が、両者の関係性の変化を測る主要な監視指標となると見るのが自然だ。
出典:大量保有報告書(2026年4月5日提出)、THE WHY HOW DO COMPANY 有価証券報告書
この保有を、どう追うか
変更報告書・追加取得の有無を継続して記録する。第16回新株予約権の引受状況および行使進捗、田邊勝己氏との借株契約(返済期限2027年4月3日)の動きがあれば、企業カルテに反映する。
