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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE大量保有報告論評編集部公開 2025.09.03更新 2026.06.13

スタメン創業者の「支配構造」が崩れる日

創業者による株式保有は外形上13.69%を維持するが、担保設定・資産管理会社経由の借入・譲渡予約権契約という三重の金融装置が重なっており、実質的な支配構造はすでに変容過程にあると見るのが自然だ。

共同保有割合(合計)
23.88%
前回 25.10%
共同保有株数(合計)
2,092,900株
4者合算
報告種別
変更報告書
大量保有変更
保有目的(記載ベース)
純投資・経営参画
報告書記載による

出典:株式会社スタメンに係る大量保有変更報告書(2025年提出)。数値はすべて同報告書記載ベース。

第1章

サマリー:何が報告されたか

今回の変更報告書は、創業者とその関係法人3社による共同保有の状況を更新するものである。保有目的はいずれも報告書の記載に基づく。

提出者(4者)
創業者個人 / 株式会社スターフロンツ / 株式会社YMS / 株式会社JOM
対象銘柄
株式会社スタメン(東証グロース)
共同保有割合
23.88%(前回報告 25.10% → 変更)
共同保有株数
2,092,900株
報告種別
変更報告書
保有目的(記載ベース)
純投資・経営参画(報告書記載による)
氏名/法人名 保有株数 保有割合
創業者個人 1,200,000株 13.69%
株式会社スターフロンツ 492,900株 5.62%
株式会社YMS 200,000株 2.28%
株式会社JOM 200,000株 2.28%
合計 2,092,900株 23.88%

出典:大量保有変更報告書(2025年提出)。

第2章

提出者とは:創業者および関係法人の素性

筆頭提出者は株式会社スタメンの創業者であり、2020年12月の東証マザーズ(現グロース)上場時から同社の筆頭株主として実質的なコントロールを維持してきた人物である。スタメンは企業向けエンゲージメントSaaS「TUNAG」を中核とする、いわゆる組織文化可視化系のスタートアップである。急成長期を経て、現在は黒字化に向けた構造改革段階にある。

共同保有者として名前の挙がるYMSおよびJOMはいずれも創業者個人が代表を務める資産管理会社であり、両者で合計40万株(4.56%)を保有する。スターフロンツについても関係法人として報告書上に記載されている。これら複数の法人を経由した株式保有は、資本の管理・分散を目的とした構造として読み取ることができる。

出典:大量保有変更報告書(2025年提出)、スタメン公開情報。

第3章

取得の構造:担保・借入・譲渡予約権が重なる三層構造

今回の変更報告書において注目されるのは、持株比率の数値変化だけでなく、その保有の質的変容である。報告書に記された保有株券の変遷を整理すると、創業家支配の背後に金融機関との複雑な関係が浮かび上がる。

創業者個人は2025年時点で1,200,000株(13.69%)を保有するが、過去には最大100万株を東海東京証券・大和証券に担保提供していた経緯がある。現時点ではその担保は解除済みであるものの、野村信託に対して24,000株および176,000株を新たに担保設定している。

資産管理会社YMS・JOMの資金調達手段はすべて創業者個人からの借入であり、その総額は2億円以上に上る。株式を担保に現金化する動きが外部の金融機関を巻き込む形で継続している点は、保有の安定性を評価するうえで重要な情報となる。

さらに、2025年6月27日にはスタメン代表取締役との間で「譲渡予約権付き契約(880円×120万株)」が締結されている。この契約は「売上369億円以上達成」という条件を付した業績連動型であり、条件充足時には創業者から現経営陣への株式移転が可能となる設計である。

観点 内容
資金繰り 株式を担保に現金化する動きが顕著。借入総額は2億円超
ガバナンス意識 上場企業として「創業家ワントップ体制」からの脱却圧力
譲渡予約権の条件 業績連動型(売上369億円以上達成)の形をとることで譲渡の正当化が可能な設計
資産管理会社経由の分散 YMS・JOMを通じた株式分散と金融的マネジメントの意図がうかがえる

出典:大量保有変更報告書(2025年提出)。

第4章

論点の整理

本件変更報告書から導かれる論点を以下の3点に整理する。

論点①:保有の「外形」と「実質」の乖離
持株比率は13.69%(創業者個人)を維持しているが、担保設定・資産管理会社への借入依存・譲渡予約権という三つの金融装置が組み合わさった状態にある。外形的な「安定株主」の存在が、実質的な支配安定性を必ずしも意味しない構造となっている点は、継続的な確認が求められる論点である。

論点②:譲渡予約権の行使可能性と支配権移転シナリオ
2027年〜2030年にかけて「株式譲渡予約権」が行使される可能性がある。条件(売上369億円以上達成)が充足された場合、880円×120万株の契約に基づき、創業者から現代表取締役へと支配権が移転するシナリオが現実味を帯びる。これは日本型スタートアップにおける創業者EXITモデルの一形態としても注目に値する。

論点③:複数資産管理会社による分散保有の透明性
YMS・JOMの資金源がすべて創業者個人からの借入(総額2億円超)であることは、実質的に創業者の資本が法人格を介して間接保有される構造を示す。今後の変更報告書において、各法人の借入残高の増減や担保の移動が生じた場合、支配構造の変化を読み取る手がかりとなると見るのが自然だ。

論点 → 監視

この保有を、どう追うか

変更報告・追加取得の有無を継続して記録する。譲渡予約権の行使条件(売上369億円達成)の充足状況、および担保設定の増減に動きがあれば、企業カルテに反映する。

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