Evo Fund、WIZEに6.72%—全額借株・第39回新株予約権6,000万株・調達資金全額ソラナ取得
【結論】Evo FundがWIZEに6.72%の保有を開示した事実は、CEO藪野氏個人名義4,070,800株を借株として活用した全額借株・取得コスト0円という特殊構造の下で、6,000万株相当(発行済の70.9%希薄化)のMSワラント型新株予約権を引き受け、調達資金の全額をソラナ暗号資産の追加取得に充当するという、日本市場では前例の少ない「Web3トレジャリー転換ファイナンス」の起動を記録したものとして位置づけられる。既存株主にとっての70.9%希薄化という重大なリスクと、ソラナ価格変動という外部リスクへの依存という二重の不確実性が、この案件の本質的論点であり、行使期間中の調達実績とソラナ事業の自立的収益化の有無が最終的な帰結を規定すると見るのが自然だ。
出典:WIZE(3664)大量保有報告書(2026年5月27日提出、義務発生日2026年5月20日)、金融商品取引法第27条の23第1項に基づく開示。発行済株式総数84,638,408株(2026年5月20日現在)。
サマリー
2026年5月27日、Evo Fund(ケイマン諸島法人)および連名提出人のEvolution Capital Management LLC(米国ネバダ州法人)が、株式会社WIZE(東京証券取引所・証券コード3664)に関する大量保有報告書を提出した。義務発生日は2026年5月20日。
実質的な保有はEvo Fund単独の5,689,700株・6.72%であり、Evolution Capitalは全額控除により0株・0.00%。保有株式はすべて借株であり取得コストは0円。借株の内訳は、藪野氏(CEO・代表取締役)名義4,070,800株、BNPパリバ(ロンドン支店)500,000株、ステート・ストリート・バンク1,518,900株の三者から構成される。
出典:上記大量保有報告書の記載内容に基づく。
提出者とは
Evo Fundはケイマン諸島に籍を置く投資ファンドであり、2006年設立。代表者はリチャード・チゾム氏(取締役)。Evolution Capital Management LLCは米国ネバダ州法人で2002年設立、同氏がCEOを務める。両者は本報告書を連名で提出しているが、保有株式の実質的な帰属はEvo Fund単独とされ、Evolution Capitalは全額控除扱いとなっている。
Evo Fundは日本の新興・小型上場企業に対してMSワラント型新株予約権(行使価格が修正されるタイプのワラント)の引受を繰り返す運用スタイルで知られる。発行体に対して資金調達機能を提供する一方、引受後に市場で株式を売却することで収益を得る仕組みを取る。本件においても、WIZEに対して第36回以降の複数回にわたって新株予約権の引受を行ってきた関係性が開示から読み取れる。
出典:大量保有報告書記載の提出者情報。
取得の構造
今回の保有は三層の構造から成る。第一層が借株による6.72%の取得、第二層が第39回新株予約権(MSワラント型)の引受、第三層が調達資金の全額ソラナ暗号資産への充当である。
借株の最大の特徴は、藪野氏(CEO・代表取締役)個人名義の4,070,800株が借株源として使われている点だ。機関投資家や証券会社からの借株が通常の形態であるのに対し、経営トップ個人の持株が借株として提供されている。残り1,618,900株はBNPパリバ(ロンドン支店)500,000株とステート・ストリート・バンク1,518,900株という機関系の調達であり、こちらは標準的な証券貸借市場での取引に相当する。
| 取得日 | 取得種別 | 取得数量 | 保有割合 | 借株先 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年5月15日 | 市場外借株 | 4,070,800株 | 4.81% | 藪野氏(CEO) |
| 2026年5月20日 | 市場外借株 | 1,618,900株 | 1.91% | BNPパリバ(ロンドン支店)500,000株+ステート・ストリート・バンク1,518,900株 |
出典:大量保有報告書「直近60日間の取得状況」欄。
第二層の第39回新株予約権は、Evo Fundが第三者割当で引き受けるMSワラント型(行使価格修正条項付き)であり、600,000個(6,000万株相当)の発行が予定されている。対価は1,800,000円(1個3円)。当初行使価格は1株3円、下限行使価格は1株17円と開示されており、市況の下落局面では行使価格が自動的に下方修正され、下限の17円まで低下した場合には調達総額の上限が変化する構造となっている。最大調達想定額は33円ベースで約9.66億円、17円ベースで約10.1億円と記載されている。
出典:大量保有報告書「予定取得」欄および添付の新株予約権発行条件記載。
第三層として、WIZEは調達資金の全額をソラナの追加取得に充当することを開示している。WIZEは国内最大級のソラナバリデータ運用を担う事業者として開示を行っており、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)ブロックチェーンのバリデータとして検証報酬(ステーキング収益)を得る事業モデルを構築しつつある。この「MSワラントで調達→暗号資産購入」という経路は、Strategyが採用したビットコイン財務戦略と類似したアプローチをソラナで実現しようとするものとして位置づけられている。
なお、藪野氏はWIZEの第38回新株予約権(6,000万株予定)の個人割当も受けており、発行体のソラナ戦略への深いコミットメントを持つCEO自らが持株をEvo Fundに貸し付けてMSワラントファイナンスを成立させるという、「経営陣がみずからリスクを取って資金調達を支援する」構造となっている点は、このスキームの異例な要素として記録に値する。
論点の整理
本件を構造的に読み解く上で、以下の三点が主要な論点として浮かび上がる。
論点①:CEO持株の借株提供という構造的特殊性
通常の大量保有報告における借株は、証券会社やカストディ銀行など第三者機関からの調達が一般的である。本件では発行体のCEO・代表取締役である藪野氏個人名義の4,070,800株(保有割合の71.5%相当)が借株源として用いられている。発行体トップの個人持株がMSワラントファイナンスの借株基盤となる構造は、経営判断とファイナンス構造の利益相反リスクを内包している可能性があり、開示の読み手が注意すべき要素といえる。
論点②:70.9%希薄化と暗号資産評価損リスクの連動
WIZEの2026年12月期第1四半期実績では、売上高6.89億円(前年同期比▲3.9%)、営業損失▲0.89億円、経常損失▲2.05億円(暗号資産評価損が主因)と記録されている。この局面で発行済株式の70.9%に達する希薄化規模のMSワラントを発行し、調達資金を全額ソラナに充当する計画は、「MSワラントで調達→暗号資産購入→評価損→さらなる調達」という循環構造のリスクを内包する。ソラナ価格の下落局面では経常損失の再拡大と行使価格の下方修正が同時に進行する可能性がある。
| 項目 | 2026年12月期1Q実績 | 備考 |
|---|---|---|
| 売上高 | 6.89億円 | 前年同期比▲3.9% |
| 営業損益 | ▲0.89億円 | 営業損失 |
| 経常損益 | ▲2.05億円 | 暗号資産評価損が主因 |
| 潜在希薄化規模 | 最大6,000万株 | 発行済84,638,408株の70.9%相当 |
出典:大量保有報告書添付資料および発行体開示(2026年12月期第1四半期)。
論点③:Evo Fundの収益構造と発行体リスクの非対称性
Evo FundはMSワラントを行使して株式を取得し、市場で売却することで差益を得る。調達資金がソラナに充当された後のソラナ価格変動は、Evo Fundの直接的な損益に影響しない。リスクは発行体WIZEとその既存株主が負担し、Evo Fundは行使・転売差益を享受するという非対称な構造が本件の基本軸を形成している。行使期間(2026年6月〜2028年6月)中にこの非対称性がどう展開するかが、既存株主にとっての中核的な注視点となる。
この保有を、どう読むか
変更報告書の提出状況(追加取得・借株返済・新株予約権行使の進捗)および保有目的の変動を継続して記録する。CEOによる借株提供の解消動向、ソラナ評価額の四半期ごとの変化、行使価格の修正状況に動きがあれば、企業ガバナンスへの反映を確認する。
