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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE決算分析論評編集部公開 2026.06.17更新 2026.06.17

プロシップ(3763)2026年3月期 決算分析

証券コード 3763 ・ 東証プライム ・ 情報・通信業
第57期〔連結〕2025年4月1日 〜 2026年3月31日 ・ 従業員 259人(外 平均臨時 16人)
総資産 14,239百万円 売上高 8,374百万円 自己資本 11,403百万円
固定資産管理を中心とした会計・業務パッケージソフトの開発・販売、SaaSソリューション、運用管理を手がける。
論評

増収増益のなか、原価率と販管費の抑制で営業利益率は一段上がったと見るのが自然だ。

前期に開いた利益と現金の差は当期で反転し、利益の質はむしろ厚みを増した。

一方でROEは二期続いた高水準から下がり、積み上がる手元資本の置きどころが観察点として残る。

収益性
34.9
営業利益率
+4.4pt

資産効率
22.1
ROE
▲2.0pt

利益の質
1.24
営業CF÷純利益
+0.48

財務余力
80.1
自己資本比率
+3.3pt

第1章

業績ハイライト

売上高は案件の大型化と要員一人当たり生産性の向上を背景に二桁増。原価率が44.1%から43.0%へ改善し、販管費も前期から減ったことで、利益の伸びが売上の伸びを上回った。営業CFは税前利益の増加と運転資本の動きを受けて大きく膨らんでいる。

項目(百万円) 当期(第57期) 前期(第56期) 前年比
売上高 8,374 7,564 +10.7%
営業利益 2,925 2,309 +26.7%
純利益(親会社株主) 2,224 1,930 +15.2%
営業CF 2,765 1,474 +87.6%
第2章

財務の構造

借入金・リース債務を含む有利子負債はゼロ。自己資本比率は80%台へ戻し、財務面の余白は広い。CF上の現金同等物は3,816百万円だが、貸借対照表の現預金は9,016百万円まで膨らんでおり、差は満期の長い定期預金の純増による。実質的な手元資金はこの数字より厚いと見るのが自然だ。

項目(百万円) 当期 前期 増減
総資産 14,239 11,380 +2,859
自己資本 11,403 8,736 +2,667
自己資本比率 80.1% 76.8% +3.3pt
有利子負債 0 0
現金及び現金同等物 3,816 3,460 +355
ネット有利子負債 ▲3,816 ▲3,460 ネットキャッシュ

数値は連結。自己資本は純資産から新株予約権を控除して算定。現金及び現金同等物はキャッシュ・フロー計算書ベース。

第3章

CFと利益の質

会計上の利益(純利益)と、実際に入ってきた現金(営業CF)は、必ずしも一致しない。両者の差=アクルーアルが正に大きいほど、利益が現金の裏づけより先行している状態にあたる。前期は純利益が営業CFを456百万円上回り、わずかに利益が先行していたが、当期は営業CFが純利益を542百万円上回る形へ反転した。税金等調整前当期純利益3,096百万円に対し営業CF2,766百万円という水準で、利益の現金化は十分に進んでいると見るのが自然だ。

純利益(黒)と営業CF(白抜き)/差=アクルーアル(純利益−営業CF、百万円) 純利益 営業CF ▲747 第53期 +180 第54期 ▲76 第55期 +456 第56期 ▲542 第57期 ▲(営業CFが純利益を上回る)=利益の現金化が進む。+(純利益が営業CFを上回る)=利益が現金に先行。

第4章

業績予想・配当

有価証券報告書には翌期の数値予想は開示されていない。会社は「継続的に経常利益率30%超」を掲げており、当期の経常利益率は36.7%でこれを満たしている。配当は累進配当を継続する方針で、当期は1株当たり40円(2025年10月1日付の1対2株式分割後)、配当総額1,029百万円、配当性向45.3%。前期の63円は分割前ベースであり、分割換算では31.5円相当となるため、一株当たりの実質配当は引き上げられている。

項目 当期(第57期) 前期(第56期)
1株当たり配当(円) 40.00 63.00(分割前)
配当総額(百万円) 1,029 780
配当性向(%) 45.3 40.4
経常利益率(%) 36.7 32.1

経営目標は経常利益率30%超の継続。配当総額・配当性向は会社開示に基づく。

第5章

資本効率と株主還元

ROEを三つの要素に分けると、当期は純利益率が上がった一方、総資産回転率と財務レバレッジがともに下がっている。手元の現預金と自己資本が積み上がったことが、回転とレバレッジの両面を押し下げた格好だ。マージン改善だけではROE低下を埋めきれていない。

ROE分解 当期 前期 方向
純利益率 26.6% 25.5% 押上げ
総資産回転率 0.65回 0.72回 押下げ
財務レバレッジ 1.27倍 1.32倍 押下げ
ROE 22.1% 24.1% ▲2.0pt

資本配分を並べると、現預金が総資産の6割超を占める一方、政策保有株は1銘柄・総資産比1.1%にとどまる。今期は定期預金の純増2,200百万円、ソフトウエア取得669百万円、ファーストアカウンティングとの資本業務提携と、積み上がった資金の置き方に動きが出始めている。手元資本が成長投資と還元のどちらに、どの速さで振り向けられるかが論点として残る。

資本配分 当期
現預金(貸借対照表) 9,016百万円(総資産比 63.3%)
政策保有株 151百万円(総資産比 1.1%)
自己資本比率 80.1%
配当性向 45.3%
総還元性向 約45.3%
社外取締役比率 42.9%(7名中3名)

監査等委員である取締役3名はいずれも社外。当期の自己株式は資本業務提携に伴う処分と譲渡制限付株式報酬の無償取得が中心で、株主還元目的の市場取得は限定的なため、総還元性向は配当性向とほぼ同水準。政策保有株はファーストアカウンティング株式会社。会社名・項目名は略称を用いた。

第6章

論点整理

01原価率が44.1%→43.0%へ改善し販管費も減少。営業利益率は30.5%→34.9%へ一段上がった。
02利益の質が反転。前期は純利益が営業CFを456百万円上回ったが、当期は営業CFが純利益を542百万円上回り、営業CFは+87.6%
03有利子負債ゼロ、自己資本比率80.1%。貸借対照表の現預金は9,016百万円で総資産の6割超を占める。
04ROEは24.1%→22.1%へ低下。マージンは上昇したが、回転率とレバレッジの低下がこれを上回った。
05定期預金純増2,200百万円、ソフトウエア取得669百万円、資本業務提携。積み上がった資金の使途に変化の兆し。
06累進配当を継続(1株40円・性向45.3%)。株主還元目的の自己株取得は限定的。
高収益と無借金という安定の上に、手元資本が静かに積み上がっている。その資本をどこに、どの速さで働かせるか——配分の選択が次の構造を決めると見るのが自然だ。

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