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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE決算分析論評編集部公開 2026.06.30更新 2026.06.30

石井食品(2282)2026年3月期 決算分析

2282 ・ 東証スタンダード ・ 食料品
第85期〔連結〕2025年4月1日-2026年3月31日 ・ 従業員405名(外 平均臨時236名)
総資産 82.0億円  売上高 109.8億円  純資産 38.2億円
無添加調理技術を核とした調理済食品(ハンバーグ・ミートボール等)の製造・販売。東証スタンダード市場上場。

論評

第85期は売上高が前期比+1.0%と微増で着地したものの、資産除去債務の見積り変更(八千代工場解体計画の具体化)に伴う減価償却費の追加計上114百万円が収益を直撃し、営業利益は▲261百万円の急落で6百万円にとどまった。最終損益は減損損失83百万円も加わり、当期純損失125百万円と4期ぶりの赤字転落となった。

一方で営業キャッシュ・フローは684百万円と前期の117百万円から大幅に改善しており、純損失にもかかわらず減価償却費531百万円が牽引する形でキャッシュは積み上がった。現金同等物残高(206億円)は有利子負債残高(198億円)をわずかに上回り、実質的なネットキャッシュ状態が続いている。

八千代工場用地の大和ハウス工業への譲渡(契約締結済み、引き渡し2030年7月予定、譲渡価額80億円)は、次期生産体制の再編資金として機能する計画だが、特別利益の計上は2030年度見込みと先は長い。今期の損失は「構造整理の前払いコスト」という性格が強く、主力食肉加工品の量販店向け売上は堅調を維持している点は記録にとどめておく。

収益性 / 営業利益率
0.06%
第85期
▲2.39pt(前期2.46%)
資産効率 / ROE
純損失計上のため算定不能
前期 7.9%
利益の質 / 営業CF
684百万円
純損失期もCF黒字を維持
+566百万円(前期比)
財務余力 / 自己資本比率
46.6%
第85期(連結)
▲3.7pt(前期50.3%)
第1章

業績ハイライト

項目 第84期(百万円) 第85期(百万円) 増減額 増減率
売上高 10,870 10,980 +110 +1.0%
売上総利益 3,628 3,562 ▲65 ▲1.8%
営業利益 268 6 ▲261 ▲97.6%
経常利益 310 5 ▲305 ▲98.5%
親会社株主帰属純利益(損失) 288 ▲125 ▲413
営業キャッシュ・フロー 118 684 +566 +481%

連結。百万円未満切り捨て。増減は第85期−第84期。営業利益の大幅減少は資産除去債務見積り変更に伴う減価償却費の追加計上(114百万円)が主因。

第2章

財務の構造

項目 第84期末(百万円) 第85期末(百万円) 増減
総資産 7,657 8,200 +543
純資産(合計) 3,852 3,820 ▲32
自己資本比率 50.3% 46.6% ▲3.7pt
有利子負債(借入金+リース) 1,994 1,977 ▲17
現金・現金同等物 1,812 2,063 +251
ネット有利子負債(+はネットキャッシュ) ▲182 +86 +268

新株予約権・非支配株主持分はいずれも計上なし。自己資本=純資産合計。有利子負債は短期借入金1,900百万円+リース債務77百万円の計。

第3章

CFと利益の質

純利益(百万円) 棒グラフ(■純利益 □営業CF) 営業CF(百万円) アクルーアル
2022/3 16 155 ▲139
2023/3 309 341 ▲32
2024/3 472 (CF↑1,248) 1,248 ▲776
2025/3 288 118 +170
2026/3 ▲125 (CF↑684) 684 ▲809

アクルーアル=純利益−営業CF。▲(bronze)はCF>純利益で利益の質が高い状態。+(navy)は純利益>CFでアクルーアルが蓄積している状態。棒の幅は純利益・CFそれぞれを最大値480Mを120pxとして比例表示。2024/3・2026/3のCFは棒を120pxでクリップし実数を注記。

第4章

業績予想・配当

有価証券報告書の提出時点(2026年6月29日)では翌期(第86期)の業績予想の数値記載は確認されない。配当については、当期純損失にもかかわらず1株当たり4円の期末配当(総額66百万円)を維持した。中間配当の実施はなく、年間配当額は前期と同額。

区分 第83期 第84期 第85期
1株当たり配当(円) 4.00 4.00 4.00
配当総額(百万円) 67 67 67
配当性向(連結) 14.7% 23.1% —(純損失期)

配当の利回りは記載しない(媒体ポリシー)。純損失期にも配当を維持した判断は「安定配当方針」に基づく。

第5章

資本効率と株主還元

ROEは当期純損失のため算定対象外。資産回転率(売上高109.8億円÷総資産82.0億円=1.34回)および財務レバレッジ(総資産82.0億円÷純資産38.2億円=2.15倍)の構造自体に大きな変化はなく、純利益マージンの消失が損失の主因。

設備投資総額(第85期) 640百万円
 うち生産性向上関連 360百万円(京丹波工場梱包自動化等)
 うち維持更新関連 163百万円(唐津工場殺菌層等)
配当総額 67百万円
自己株式取得 0.02百万円(単元未満株の買取りのみ)
翌期設備投資計画(唐津工場 幼児食設備) 274百万円(2026年4月着手、2027年3月完成予定)
政策保有株式(上場11銘柄)簿価 970百万円(千葉銀行 682百万円が最大)

政策保有株式(上場11銘柄)の簿価合計970百万円は株主資本(3,280百万円)の約30%に相当する。

第6章

論点整理

01今期の赤字転落は▲125百万円の純損失だが、その主因は資産除去債務の見積り変更(八千代工場解体計画具体化)に伴う減価償却費の追加計上114百万円と減損損失83百万円であり、いずれも非資金項目または将来費用の前倒し計上という性格が強い。主力の食肉加工品売上は+9億円(+1.0%)と堅調であり、本業の稼ぐ力が損なわれたわけではない。
02八千代工場用地(約4.8万㎡)を大和ハウス工業へ80億円で譲渡する契約が締結済みで、引き渡しは2030年7月の予定。帳簿価額232百万円に対する譲渡価額は大幅な含み益となるが、特別利益の計上は約4年後。同時に唐津工場での幼児食製造設備投資274百万円が進行中であり、2030年以降の生産体制像をどう描くかが中期の問いになる。
03営業CFが前期比+566百万円の684百万円に急増したのは、主として減価償却費の積み上がり(前期389百万円→当期531百万円)によるものである。資産除去債務見積り変更に伴う追加の減価償却114百万円が算入されており、実態的なキャッシュ創出改善幅はやや割り引いて見る必要がある。それでも現金同等物残高が206億円と有利子負債(198億円)を上回りネットキャッシュ状態を維持している。
04惣菜部門の製造用資産については、前期に続き今期も3工場(八千代・京丹波・唐津)で減損損失を計上した。「営業活動から生じる損益が継続してマイナス」と注記に明記されており、同部門の収益構造の抜本的改善が未達のまま推移していることが確認される。食肉加工品(売上構成87%)が全体業績を支える一方、惣菜・正月料理・地域商品の構造的採算改善が課題として継続している。
05会計監査人が千葉第一監査法人からかなで監査法人へ交代した(2025年6月)。継続年数の長期化による刷新であり、双方から特段の異議は示されていない。また政策保有株式(上場11銘柄、簿価970百万円)の水準は純資産対比で相応に高く、縮減方針の有無が今後の投資家の関心事になり得る構造だが、今期報告書では現状維持の確認にとどまる。
石井食品の第85期は、工場解体計画の具体化という構造再編の起点となった年として記録される。数字の表面は4期ぶりの純損失だが、その実質は「将来コストの前倒し認識」という側面が大きく、営業CFが示す現金収支は改善している。八千代工場用地80億円の売却益が実現する2030年度に向け、次の生産体制をいかに構築するかが、この先数年の論点の中心になると見るのが自然だろう。

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