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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE決算分析論評編集部公開 2026.08.05更新 2026.08.05

アスクル株式会社 2026年5月期 決算分析

証券コード 2678 ・ 東証プライム ・ 小売業
第63期(連結)会計期間:2025年5月21日~2026年5月20日 ・ 従業員数3,646名(前期3,697名)
総資産2,299億円 売上高4,002億円 純資産515億円
法人向けBtoBオフィス用品通販「ASKUL」、個人向けEC「LOHACO」を中核とするeコマース事業者。

論評

アスクルは2026年5月期、2025年10月19日に発生したランサムウェア攻撃により物流システム等が被害を受け、WEBサイトでの注文受付を一時停止したことが業績を大きく圧迫した。

売上高は4,001億99百万円(前期比▲16.8%)、営業損失174億45百万円(前期は営業利益140億円)、親会社株主に帰属する当期純損失221億50百万円(前期は純利益90億68百万円)と、増収増益から一転して大幅な赤字に転落した。

2026年2月以降、主要なサービスレベルはシステム障害発生前の水準まで復旧しているが、自己資本比率は20.8%(前期34.2%)まで低下している。

収益性(営業利益率)
▲4.36%
営業損失計上
資産効率(ROE)
▲35.3%
会社公表値
利益の質
0.49
純利益・CFとも赤字(参考値)
財務余力(自己資本比率)
20.8%
前期34.2%
第1章

業績ハイライト

売上高
400,199百万円(前期481,101百万円、▲16.8%)
営業利益
▲17,445百万円(前期14,004百万円の利益、赤字転落)
親会社株主に帰属する当期純利益
▲22,150百万円(前期9,068百万円の利益、赤字転落)
営業活動によるキャッシュ・フロー
▲10,802百万円(前期12,908百万円の収入、赤字転落)

経常損失は190億62百万円(前期は138億16百万円の利益)。eコマース事業は売上高393,084百万円(同▲16.8%)、営業損失162億70百万円(前期は142億55百万円の利益)。ASKUL事業は障害直後の11月度に前年同月比94.5%減まで落ち込んだが、第4四半期には同▲11.4%まで回復した。特別損失としてシステム障害対応費用51億8百万円、株式会社AP67に係るのれん・顧客関連資産の減損損失48億23百万円を計上している。

第2章

財務の構造

総資産
229,907百万円(前期末227,782百万円、+0.9%)
純資産
51,455百万円(前期末81,254百万円、▲36.7%)
自己資本比率
20.8%(前期末34.2%、▲13.4pt)
負債
178,452百万円(前期末比+31,924百万円)
現金及び現金同等物
48,624百万円(前期末48,423百万円、+0.4%)

負債の増加は主に、手元資金の流動性を担保するための短期借入金269億円の実行、リース債務93億11百万円の増加による。純資産の減少は、親会社株主に帰属する当期純損失221億50百万円の計上と、自己株式の消却77億94百万円、配当金の支払17億76百万円等による利益剰余金の減少317億22百万円が主因。

第3章

CFと利益の質

純利益(黒)と営業CF(白抜き)/差=アクルーアル(純利益-営業CF、百万円) 純利益 営業CF 0 ▲3,840 前期(2025年5月期) ▲11,348 当期(2026年5月期)

両期とも営業CFが純利益(当期は純損失)を上回る健全な構図(▲bronze)となっている。当期の営業CFの赤字幅(108億円)は純損失(221億円)より小さく、減損損失や減価償却費等の非資金項目が差を埋めている。

第4章

業績予想・配当

2025年7月4日に公表した中期経営計画(2026年5月期~2029年5月期)では、最終年度に連結売上高5,400億円、連結営業利益率3.7%、ROE20%を経営上の目標としているが、ランサムウェア攻撃の影響により当連結会計年度の実績は売上高4,001億円、営業利益率▲4.4%、ROE▲35.3%となった。次期の具体的な数値業績予想については本書の範囲では確認できない。配当金の支払は17億76百万円実施されている。

第5章

資本効率と株主還元

ROE
▲35.3%(中期経営計画目標20%)
EPS
▲245.41円(前期95.45円)
自己株式の異動
取得64億45百万円、消却77億94百万円
配当
配当金支払17億76百万円
主な資金調達
短期借入金269億円の純増、セール・アンド・リースバックによる収入130億43百万円
特別損失
システム障害対応費用51億8百万円、のれん・顧客関連資産減損損失48億23百万円
第6章

論点整理

012025年10月19日発生のランサムウェア攻撃により物流システムが被害を受け、増収増益基調から一転して大幅な赤字に転落した。ASKUL事業は障害直後の11月度に前年同月比94.5%減まで落ち込んでいる。
022026年2月以降、主要なサービスレベルは復旧しているものの、自己資本比率は20.8%(前期34.2%)まで低下しており、短期借入金の実行やセール・アンド・リースバックによる資金調達で流動性を確保している。
032029年5月期を最終年度とする中期経営計画の目標(売上高5,400億円・営業利益率3.7%・ROE20%)に対し、当期実績は大きく乖離しており、2027年5月期以降の業績回復のペースが焦点となる。

論評編集部は、開示された事実の範囲で本件を記録する。システム障害からの業績回復の進捗や財務体質の立て直しについては、続報が提出され次第、改めて確認する。

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