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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE決算分析論評編集部公開 2026.07.02更新 2026.07.02

河西工業(7256)2026年3月期 決算分析

7256 ・ 東証スタンダード ・ 輸送用機器
第95期〔連結〕2025年4月1日-2026年3月31日 ・ 従業員7,358名(外 平均臨時354名)
総資産 1,453億円  売上高 1,962億円  純資産 268億円
自動車内装トリムシステム部品(ドアトリム・ルーフトリム等)の企画・開発・製造・販売を行う独立系自動車部品メーカー。世界8か国に生産拠点を展開。

論評

第95期は売上高が前期比▲10.3%の1,962億円に減少した一方、営業利益は前期の営業損失2.9億円から+65.8億円に転換し黒字化を達成した。経常利益も57億円(前期は経常損失12.9億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は40.5億円(前期は純損失91.8億円)と、損益計算書全般で大幅な改善が確認される。中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration」初年度の構造改革が数字として表れた格好である。

もっとも、提出会社単体では純資産が依然として▲337.5億円の債務超過(前期末▲361.4億円から改善)であり、連結純資産268億円のうち非支配株主持分が100.7億円を占める。自己資本比率は連結で11.5%(前期8.6%)に上昇したが、絶対水準としては低い。営業キャッシュ・フローは96.1億円と前期の9.1億円から大幅に改善し、財務制限条項付きのコミットメントライン契約を含む借入金への依存度が高い財務構造のもとで、キャッシュ創出力の改善が当面の焦点であり続けている。

内部統制については、過年度決算の訂正及び有価証券報告書の提出遅延を受けて2025年11月に東京証券取引所へ改善報告書を提出し、2026年5月に改善状況を公表した。ガバナンス体制の立て直しが進行中である点は、業績の数字とは別の軸として記録しておく必要がある。

収益性 / 営業利益率
3.35%
第95期
+3.49pt(前期▲0.13%)
資産効率 / ROE
27.8%
第95期(連結)
前期 ▲81.1%
利益の質 / 営業CF÷純利益
2.37
9,611÷4,052(百万円)
前期は両者ともマイナス
財務余力 / 自己資本比率
11.5%
第95期(連結)
+2.9pt(前期8.6%)
第1章

業績ハイライト

項目 第94期(百万円) 第95期(百万円) 増減
売上高 218,801 196,189 ▲22,612
営業利益(損失) ▲289 6,576 +6,865
経常利益(損失) ▲1,288 5,702 +6,990
親会社株主帰属純利益(損失) ▲9,182 4,052 +13,234
営業キャッシュ・フロー 911 9,611 +8,700

連結。百万円未満切り捨て。増減は第95期−第94期。減損損失は前期42.1億円から当期6.1億円へ大幅に縮小し、営業損益の改善に寄与した。売上高減少は主要販売先OEMの生産動向によるものであり、収益性改善はコスト構造の見直しが主因。

第2章

財務の構造

項目 第94期末(百万円) 第95期末(百万円) 増減
総資産 144,831 145,329 +498
自己資本(株主資本+その他包括利益累計額) 12,454 16,724 +4,270
自己資本比率 8.6% 11.5% +2.9pt
有利子負債(短期・長期借入金+リース債務) 77,125 74,231 ▲2,894
現金及び現金同等物 26,730 23,559 ▲3,171
ネット有利子負債 50,395 50,672 +277

自己資本=純資産合計(22,909/26,793)-非支配株主持分(10,454/10,069)。提出会社単体では純資産▲33,755百万円の債務超過が継続(前期末▲36,136百万円)。日産自動車との合意により、同社が完全希釈化ベースで議決権5%以上を保有する限り、剰余金の配当・自己株式取得等には事前承諾が必要とされている。

第3章

CFと利益の質

純利益と営業CFのアクルーアルチャート

アクルーアル=純利益−営業CF。▲(bronze)はCF>純利益で利益の質が高い状態。+(navy)は純利益>CFでアクルーアルが蓄積している状態。棒の幅は純利益(損失含む)・CFそれぞれを最大値20,000百万円を120pxとして比例表示。第95期はCF(96.1億円)が純利益(40.5億円)を大きく上回り、利益の質は5期間で最も良好な水準にある。

第4章

業績予想・配当

会社は次期(第96期、2027年3月期)の連結業績予想として、売上高2,000億円、営業利益80億円、経常利益60億円、親会社株主に帰属する当期純利益40億円を開示した(前提為替レート1米ドル=150円)。配当については、提出会社単体が依然として債務超過にあることなどから無配が継続している。

区分 第93期 第94期 第95期 第96期(会社予想)
売上高(連結・百万円) 214,239 218,801 196,189 200,000
営業利益(連結・百万円) ▲289 6,576 8,000
親会社株主帰属純利益(百万円) ▲1,559 ▲9,182 4,052 4,000
1株当たり配当(円) 0 0 0

配当の利回りは記載しない(媒体ポリシー)。無配は第91期以降一貫して継続。中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration」では2027年度(2028年3月期)に営業利益率4~5%を目標としている。

第5章

資本効率と株主還元

ROE分解では、純利益率2.07%(4,052÷196,189)、総資産回転率1.35回(196,189÷145,080〔平均〕)、財務レバレッジ7.36倍(145,080÷19,701〔自己資本平均〕)の掛け合わせとなる。前期の大幅な債務超過状態からの回復過程にあり、財務レバレッジが高水準であること自体が高ROEの主因である点には留意が必要である。

A種優先株式(発行済5,827,274株) 年率7.0%の優先配当条項付き(払込金額相当額に対して)。普通株主に優先して配分。
提出会社単体の純資産(債務超過額) ▲33,755百万円(前期末▲36,136百万円から改善)
コミットメントライン契約(りそな銀行) 総貸付極度額30億円、財務制限条項付き
自己株式取得(当期) 該当なし
日産自動車との事前承諾事由 議決権5%以上保有中は配当・自己株取得等に事前承諾が必要

A種優先株式は2024年に第三者割当増資として発行されたとみられ、累積条項・参加条項を伴う。普通株主への配当余力は当面、A種優先配当金(年率7.0%)の支払いを上回る収益確保が前提となる構造にある。

第6章

論点整理

01第95期の黒字転換は、売上高が前期比▲10.3%減少する中で達成された点に構造的な意味がある。減損損失が前期42.1億円から6.1億円へ大幅縮小したことと、北米事業を中心とした構造改革によるコスト削減が主因であり、トップラインの回復を伴わない収益性改善という性格を持つ。
02提出会社単体は依然として▲337.5億円の債務超過状態にあり、連結純資産268億円は北米・メキシコ等海外子会社の利益剰余金や非支配株主持分(100.7億円)に支えられている部分が大きい。連結ベースの改善が単体の資本構成改善に直結するまでには時間を要する見込みである。
03過年度決算訂正・有価証券報告書提出遅延を受けた内部統制の不備について、2025年11月に東京証券取引所へ改善報告書を提出、2026年5月に改善状況を公表した。財務数値の回復と並行してガバナンス体制の立て直しが進行している局面であり、今後の四半期開示の安定性が引き続き観察点となる。
04A種優先株式(発行済5,827,274株、年率7.0%の優先配当条項)の存在により、普通株主への利益配分は優先株主への支払いが完了した後となる序列が設定されている。中期経営計画の目標である2027年度営業利益率4~5%の達成度合いと合わせて、優先株式の処理方針(償還・転換等)が今後の論点になり得る。
05日産自動車は完全希釈化ベースで議決権5%以上を保有する限り、当社の配当・自己株式取得等の重要事項に事前承諾権を持つ。主要販売先OEMが同時に重要株主としての関与を持つ構造であり、両者の関係性は当社の資本政策の自由度に直接影響する位置づけにある。
06次期(第96期)会社予想は売上高2,000億円・営業利益80億円・純利益40億円と、増収増益を見込む内容である。前期比で見れば売上高は微増にとどまる一方、営業利益は当期実績65.8億円から80億円への上積みを見込んでおり、収益性改善の継続を前提とした計画となっている。
河西工業の第95期は、中期経営計画「Kasai Turnaround Aspiration」初年度として収益性の回復を数字で示した一年と位置づけられる。営業損失からの黒字転換、営業キャッシュ・フローの大幅改善という結果は記録に値する一方、提出会社単体の債務超過、A種優先株式の存在、過年度の内部統制不備への対応継続など、財務構造とガバナンスの両面で再建途上にあることも同時に確認される。2028年3月期を最終年度とする中期計画の進捗と、単体ベースでの資本構成改善の道筋が、今後の評価軸になると見るのが自然だろう。

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