証券コード 2502 ・ 東証プライム ・ 食料品
第102期(連結)会計期間:2025年1月1日~2025年12月31日 ・ 従業員数28,560名(連結)
総資産6兆284億円 売上収益2兆8,947億円 自己資本3兆31億円
純粋持株会社のもと、日本・東アジア、欧州、アジアパシフィックを核にビールを中心とした酒類・飲料・食品事業を展開する。
論評
アサヒグループホールディングスは2025年12月期、売上収益2兆8,946億円(前期比▲1.5%)、事業利益2,630億円(同▲7.8%)となり、2025年9月29日に発生したサイバー攻撃による国内システム障害の影響で第4四半期が大幅な減収・減益となった。
親会社所有者帰属当期利益は1,216億円(同▲36.7%)まで落ち込み、営業CFも前期比2,989億円減の1,048億円にとどまった。
一方で、東アフリカ市場でDiageo Kenya Limited等の株式取得を決定しており、この資金調達のため上限6,500億円のコミットメント契約を締結している。
収益性(事業利益率)
9.08%
事業利益÷売上収益
資産効率(調整後ROE)
8.4%
前期10.7%
財務余力(自己資本比率)
49.8%
親会社所有者持分/総資産
第1章
業績ハイライト
売上収益
2,894,676百万円(前期2,939,422百万円、▲1.5%)
事業利益
262,997百万円(前期比▲7.8%)
営業利益
185,870百万円(前期比▲30.9%)
親会社所有者帰属当期利益
121,574百万円(前期192,080百万円、▲36.7%)
営業活動によるキャッシュ・フロー
104,816百万円(前期403,723百万円、▲74.0%)
2025年9月29日発生のサイバー攻撃により日本の受注・出荷システムが停止し、第4四半期が大幅な減収・減益となった。影響は日本国内システムに限られ、欧州・アジアパシフィックの業績への影響はないとされている。地域別では日本・東アジアが事業利益▲16.1%と落ち込む一方、欧州は為替影響もあり+8.1%、アジアパシフィックは▲1.4%。
第2章
財務の構造
総資産
6,028,414百万円(前期末5,403,405百万円、+11.6%)
自己資本
3,003,052百万円(前期末2,668,801百万円、+12.5%)
自己資本比率
49.8%(前期末49.4%、+0.4pt)
有利子負債
1,804,829百万円(前期末1,426,352百万円、+26.5%)
現金及び現金同等物
156,380百万円(前期末83,961百万円、+86.3%)
ネット有利子負債
1,648,448百万円(前期末1,342,390百万円、+22.8%)
Net Debt/EBITDAは3.70倍で、財務方針のガイドライン(2.5~3倍程度)を超過している。有利子負債の増加は社債・借入金の積み増しによるもので、Diageo Kenya案件を含む今後の戦略投資に備えた資金調達の側面もある。
第3章
CFと利益の質
前期は営業CFが純利益を大きく上回る健全な構図だったが、当期はサイバー攻撃の影響による法人所得税等の支払や運転資金の悪化により営業CFが急減し、純利益とほぼ均衡する水準まで縮小している。
第4章
業績予想・配当
2025年12月期の1株当たり配当額は52円(累進配当方針に基づき増額)。財務方針ではDOE(株主資本配当率)4%以上を目指すとしているが、当期実績のDOEは2.7%にとどまった。次期の数値業績予想については本書での言及は限定的だが、2026年度は地政学リスクの複雑化やインフレによる経済減速リスクが懸念されるとしつつ、サイバー攻撃の再発防止策の実行と収益力の回復・強化を進める方針としている。
第5章
資本効率と株主還元
ROE(調整後)
8.4%(前期10.7%、ガイドライン11%以上)
ROIC
6.1%(ガイドライン10%以上、WACC5.5~6%程度)
EPS(基本・調整後)
81.29円(調整後98.31円)、前期126.66円(調整後120.65円)
期後の主要事項
Diageo Kenya Limited株式100%・UDV (Kenya) Limited株式53.68%の取得を決定。資金調達のため上限6,500億円のコミットメント契約を締結(報告期間末日時点で借入実行残高なし)
第6章
論点整理
012025年9月のサイバー攻撃による国内システム障害が第4四半期業績を直撃し、通期の親会社所有者帰属当期利益は▲36.7%となった。影響は日本国内システムに限定されているとされている。
02ROE・ROIC・EPS成長率のいずれも2025-2030年ガイドラインを下回り、Net Debt/EBITDAもガイドライン上限を超過するなど、主要指標が計画に届かない一年となった。
03東アフリカでのDiageo Kenya案件は、システム障害からの立て直しと同時並行で進める大型の海外展開であり、上限6,500億円のコミットメント契約という資金調達規模の大きさも含め、続報を要する。
論評編集部は、開示された事実の範囲で本件を記録する。サイバー攻撃の再発防止策の実行状況やDiageo Kenya案件の進捗については、続報が提出され次第、改めて確認する。